薬剤耐性HIVウイルス対応マニュアル(Knowledge book)の執筆者会議を実施しました
SATREPS 2023年3月22日
我々SATREPSプロジェクトの最終目標は、各種研究結果に基づき、ベトナムにおけるHIV/AIDS対策に対しての政策提言を行うことにあります。これまでのプロジェクト活動からは、現在の、そしてこれからのHIV対策として薬剤耐性ウイルスにどう対応するか、というトピックが焦点として浮かび上がってきました。長年HIV/AIDSと闘ってきているベトナムにも、当然HIV/AIDS診療・治療マニュアルや各種のガイドラインはあります。しかし、薬剤耐性検査とその結果を踏まえたレジメン変更については十分にまとめられておらず、保健省HIV/AIDS予防局(VAAC)からも今後の重要課題だと指摘されています。それを踏まえ、プロジェクトでは最終年度にかけて、薬剤耐性HIVウイルスに臨床現場がどう対応すべきかを「Knowledge Book」としてまとめようと動き始めています。
準備作業は既に始まっていましたが、2023年3月2日(木曜日)、Knowledge Book執筆者である日本側・ベトナム側専門家が顔を合わせる第一回執筆者会議をハノイで行いました。日本側からはACC岡慎一センター長をはじめ、田沼医師、上村医師、小泉医師らが参加。ベトナム側からはHIV/AIDS問題の主管当局であるVAACや、プロジェクトのメインカウンターパートの国立熱帯病病院、そしてハノイ医科大学に加え国立衛生疫学研究所(NIHE)やパスツール研究所のHIV/AIDS専門家ら7名の参加を得ました。会合では、Knowledge Bookの方針をどうしていくか、対象をどう絞るか、どのように網羅的かつ分かりやすく執筆するか、などについて議論しました。その中で、HIV/AIDSに関わる臨床家が現場で参考にできる資料を目指すと同時に、ハノイ医科大学のような教育機関でも参照でき、学生を含めたより広い対象に届くようにしてはどうかとのアイディアも出て、議論は盛り上がりました。
現在ベトナムにおいては薬剤耐性検査が医療保険でカバーされていない、また検査実施機関も限られているなどの課題もあります。これから更にHIV治療の効果を高めていくためには、薬剤耐性検査に基づいて適切に治療薬の選択を行うことが大切です。一歩先のより良いHIVケアを提供する一助となれるよう、今後もVAACやベトナム人専門家との連携を密にし、臨床現場で役に立つKnowledge Bookの作成を進めていきます。
ハノイ医科大学はベトナムで最も歴史のある国立医科大学です。
オンラインでの参加者もいるハイブリッド形式でしたが、在ハノイの方とは直接顔合わせができてとても有意義でした。