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Activities活動内容

ハノイ医科大学とHIV・AIDS、性感染症、PrEPに関するワークショップを開催しました

SATREPS  2021年8月23日 

 HIV感染リスクの高い非感染者に対する曝露前予防(Pre-Exposure Prophylaxis、通称「PrEP」)に関する研究(PrEPについてはこちらを参照)は、JICA-SATREPSプロジェクトの3つの柱の一つです。PrEP普及に関する研究協力を行うハノイ医科大学が運営するクリニック、Sexual Health Promotion clinic (通称SHP)は、その名の通り性感染症(Sexually Transmitted Infection:STI)も重要な課題としています。
 2021年8月10日、「男性同性愛者(MSM)におけるSTIの現状と、その迅速・簡便な検査」をテーマにワークショップを開催しました。このテーマは、前回4月に開催したワークショップでのハノイ医科大学の関心に沿って設定されたものです。

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安藤医師の発表に、多くの質問やコメントが寄せられました。

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ハノイはロックダウン中のため、参加者約20名の大半がウェブで参加しました。

 まずはベトナム側から、SHPクリニックの活動紹介、MSMが多く悩む梅毒やクラミジア・淋菌(Chlamydia trachomatis/Neisseria gonorrhoeae(CT/NG))感染症の現状とそれらの検査における課題が発表されました。特に性器や肛門、咽頭へ感染するCT/NGは感染者が多く、SHPのMSMコホートでの感染率は20-30%に上ります。CT/NGは自覚症状が少ないため、MSMをはじめとする感染リスクが高いライフスタイルであれば定期的な検査が重要です。しかし、検査費用は1部位につき約32ドル。CT/NGの両方を各3部位検査すると約200ドルと、現地の物価水準と比較した場合、かなり高額です。加えて、検査結果受け取りまでに5日間を要することなどが定期的な検査を阻む要因となっていることが報告されました。

 これを受け、日本側から安藤尚克医師が、「MSMを対象とした自己採取の混合検体(pooled sampling)を用いたクラミジアと淋菌感染症のスクリーニング」と題し講演を行いました。混合検体による検査法は複数の検体を混合し、同時に検査することで検査にかかる時間・費用を効率化します。CT/NG感染症のスクリーニングでは、性器・肛門・咽頭の3つの部位から採取した検体を混合して検査します。この方法は感度が高く、従来の(各部位での)検査法と結果の一致性も高いことから、CT/NG感染症のスクリーニングを拡大していく上で有効な方法であることを紹介しました。

 ベトナム側参加者からの活発な質問を受けながらのディスカッションでは、多くの参加者から混合検体方式での検査に関心が寄せられました。現在のベトナム保健省のガイドラインでは混合検体によるプール方式での検査が臨床向けに認められていないため、今後早期に認めて欲しいとの声が上がり、当方式を広く活用すべく、同ガイドラインの改定過程に向けて保健省に提案することも必要であるとの意見も出ました。全員で更なる議論が必要と一致し、混合検体方式のニーズの高さを感じたワークショップとなりました。

 今なお、日本とベトナム双方で新型コロナウイルス感染症が拡大しています。そのような限られた状況の中でも可能な限りの活動を遂行して参ります。