ハノイ医科大学とHIV/AIDS、性感染症、PrEPに関する第3回ワークショップを開催しました
SATREPS 2021年12月21日
ACCベトナム拠点では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下ではありますが、プロジェクトの活性化や相互交流を目的に、ハノイ医科大学の若手を中心とした研究者との研究活動の紹介・共有を定期的に実施しています。(第一回ワークショップの詳細はこちら、第二回ワークショップの詳細はこちらからご確認いただけます。)2021年12月21日、COVID-19の性感染症およびPrEPへの影響をテーマに第3回目となるオンラインワークショップを開催し、日本とベトナム双方から約20名の参加者がそれぞれ発表を行いました。
ベトナムでも感染防止対策として、数ヶ所の会議室に分散して参加しました。
新会議システムの導入で、ベトナムからの発表も大変聞きやすくなりました。
はじめに日本側、ACC 水島大輔医師から「東京の男性同性愛者におけるCOVID-19の性行動への影響」に関する発表を行い、COVID-19拡大の影響による一時的なPrEP登録の中止を除き、Sexual Health外来(SH外来)のPrEP登録者数は順調に伸びていること、PrEP開始12か月後までのPrEP継続率は90%以上を維持していること等を報告しました。特に、PrEP未使用者において、COVID-19前後での性感染症罹患率は大きな変化がなかったものの、PrEP使用者の間では、COVID-19拡大後に性感染症が増加傾向にあるという分析結果を示しました。これはPrEPの認知度が高まり、PrEPによりHIV感染リスクが低下したことに対するリスク補償行動に起因すると考察されます。
続いてベトナム・ハノイ医科大学 Nguyen Duc Khanh医師が、「Sexual Health Promotionクリニック(SHPクリニック)におけるCOVID-19のPrEP継続へのインパクト」と題し、COVID-19の各アウトブレイク前後のPrEP継続率の比較や新たに導入されたTele PrEP(郵送による検査と内服薬の提供)の実施状況等について発表されました。特に最も長い社会規制となった第5波(2021年4月~9月)の前後では、PrEP新規登録者およびPrEP継続率の減少がみられたとのことです。Tele PrEPはこれらを補うための新たな戦略として期待されていますが、一方で、郵送での性感染症のスクリーニングや情報守秘に関する課題等も共有されました。
ワークショップ終盤の質疑応答では、ベトナムSHPクリニックでのPrEP継続率が日本のSH外来に比べて低い理由について意見を交わしました。ベトナムでは内服薬が無料で提供されているため日本の使用者に比べてPrEP開始に対する動機が弱いことや、PrEPを提供する施設が多数ありオンラインでもPrEP薬を購入できることから、PrEP使用者は自由に薬の入手場所や方法を変更できること等が考えられています。SH外来からの「PrEP使用者で性感染罹患率が増加した」という報告から、Tele PrEPの拡大がすすむベトナムではPrEP使用者における定期的な性感染症スクリーニングの重要性が示唆されました。
ベトナムでも日本でも、新型コロナウイルス感染症は依然として予断を許さない状況です。HIV/AIDSの予防と治療に及ぼす影響も、次第に大きくなってきています。厳しい状況下ではありますがより良いHIVケアを提供する一助となれるよう、今後も様々な取り組みを進めて参ります。