ハノイ医科大学とHIV/AIDS、性感染症、PrEPに関する第5回ワークショップを開催しました
SATREPS 2022年9月21日
ACCベトナム拠点はハノイ医科大学と共催で、SATREPSプロジェクトの活性化や若手を中心とした研究者の相互交流を目的に、お互いの研究活動を紹介、知識を共有するためオンラインワークショップを定期的に開催しています。
2022年8月25日、「PrEP継続とアドヒアランス支援」をテーマに、日本とベトナム双方からの参加者を迎えて第5回目となるオンラインワークショップを開催しました。
日本側からは、PrEP使用者・非使用者へのインタビューした結果をまとめた「関係性の中で変化するHIV感染症に対する曝露前予防の位置づけ」が発表されました。発表の中で、PrEPは主体的にHIV感染から自分の身を守れる手段として、使用者の「HIV感染の不安からの解放」や「性生活のQOLの向上」につながる一方、「PrEPの使用者=性に奔放な人」、「PrEP使用=コンドーム不要」といったPrEPへの負のイメージや誤解により、PrEPの中断を招いてしまった事例が紹介されました。PrEP使用者に対する同様のレッテルはベトナムにも存在するそうで、PrEPを男性同性愛者と結び付けて広報されているベトナム社会では、PrEP希望者が一般の医療機関で薬を受け取るハードルが高く、そのためPrEPへのアクセスの障害となっていることが共有されました。
ベトナム側からは、PrEP中断者へのインタビュー結果をまとめた「PrEPケア継続の多層的な困難に対するMSMの認識:2020年の質的研究」が発表されました。PrEP中断には、薬の負担や副作用などの個人レベルの要因、PrEPクリニック等にまつわる組織レベルの要因、PrEPに対するスティグマやCOVID-19のインパクト等の構造レベルの要因が多層的・複合的に関連していたことが共有され、各レベルの要因への効果的な介入の必要性が示唆されました。また、現在試験的に実施されている長期作用型PrEP注射について、痛みや副作用などの懸念があるものの、全般的には肯定的に受け入れられているそうです。
今回のワークショップでは、PrEP継続を促進するためには、PrEP使用者のメンタルヘルスの把握と使用者それぞれの状況に対応した適切な支援が重要であると双方の意見が一致しました。ハノイ医科大学のSexual Promotion Clinic(SHP)では、メンタルヘルスについて診察時に簡易かつ段階的なスクリーニングを行い、必要時には精神科医や心理士につなぐ取り組みが行われていることが報告されました。こうした取り組みは、今後日本でも参考にできると考えられます。
ハノイ医科大学Sexual Promotion Clinicにおけるメンタルヘルススクリーニングが注目されました。
これまで行ったワークショップの詳細は、以下リンクからご確認ください。
第1回 2021年4月14日開催 第2回 2021年8月10日開催 第3回 2021年12月21日開催 第4回 2022年4月27日開催