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Activities活動内容

ハノイ医科大学とHIV/AIDS、性感染症、PrEPに関する第4回ワークショップを開催しました

SATREPS  2022年5月16日 

 ACCベトナム拠点はハノイ医科大学と共催で、SATREPSプロジェクトの活性化や若手を中心とした研究者の相互交流を目的に、お互いの研究活動を紹介、知識を共有するためオンラインワークショップを定期的に開催しています。これまで行ったワークショップの詳細は、以下リンクからご確認ください。

第1回 2021年4月14日開催 第2回 2021年8月10日開催 第3回 2021年12月21日開催

 2022年4月27日に「COVID-19流行下におけるPrEPの継続」をテーマに開催した第4回目のワークショップには、日本とベトナムから25名が参加しました。

 はじめに、ベトナム・ハノイ医科大学 Mai Quang Anh研究員が「ベトナムCOVID-19アウトブレイク下におけるSexual Promotion Clinic(SHP)でのPrEP開始と継続のための革新的な戦略」について発表しました。コロナ禍でのロックダウンや社会的規制などにより、SHPで一時的にオンサイト(病院に受診して)のPrEP処方が難しくなったことに起因し、今後は自宅若しくはコミュニティにいる希望者へも処方できるよう新たな仕組みが必要である、というものです。
 同時にQuang Anh研究員は、SHPが実施しているTele PrEP※1とMobile PrEP※2の経過についても報告しました。これらの活動はコロナ禍の現状だけに有効なものではなく、これまでケアが届きにくかった地域へもPrEP提供が可能となり、HIV感染リスクの減少につながる非常に有益なものだと述べられました。
 一方Tele PrEPの問題点として、HIV自己検査キットを郵送する過程で、キットの紛失や匿名性に関する不安、不適切な方法での検査と検査結果の信頼性への懸念なども挙げられました。

※1:Tele PrEP:PrEP薬やHIV検査キットを自宅へ郵送する活動
※2:Mobile PrEP:コミュニティで活動する組織と協力し、コミュニティでPrEP薬や検査、カウンセリング等を提供する活動

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発表中であっても、随時多くの質問がチャットで寄せられます

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質問に答えるMai Quang Anh研究員

 次に、ACCから林田 庸総技術職員が、「郵送による乾燥濾紙血検体を用いたHIV検査の検証」について発表しました。
 日本では保健所でHIV検査を無料で受けることができますが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、保健所でのHIV検査件数は2020年以降大幅に減少しています。HIV検査へのアクセスを改善するため、乾燥濾紙血(Dried Blood Spot、DBS)を用いた郵送HIV検査の需要が高まっていることから、林田技術職員はその検査方法を検証しました。
 HIV感染者50名、HIV非感染者50名から得たDBSを用いてLumipulseでHIV抗原/抗体を測定した実験では、HIV感染者1名が陰性(感度98%)、HIV非感染者全員が陰性(特異度100%)という結果となりました。DBSは血漿検体を用いたHIV検査に比べて感度が多少劣るものの、HIV検査の拡大に有用な選択肢であることが示唆されました。

参考文献: Validation of mailed via postal service dried blood spot cards on commercially available HIV testing systems - PubMed (nih.gov)

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発表を行う林田 庸総技術職員

 2名の発表を終え、今回のワークショップでは、今後もさまざまな事象が発生したとしても利用者が自身の状況に合わせた方法でPrEPを継続して服用できる環境を整えること、Tele PrEPやMobile PrEP、DBSを用いた郵送HIV検査といった多様な選択肢があることは極めて重要であり、それらがコミュニティでのPrEPの拡大や継続率の改善、HIV治療の発展にもつながると結論付けられました。

 Withコロナの時代であっても、HIVの予防と治療は喫緊の課題です。HIV・エイズに対する多くの支援を「Withコロナ」に適応させ、より質の高い医療・診療体制の維持と拡大を目指し、現場では日々模索しながら進化を続けています。